高年収を狙えるエンジニアのスキルTop3は?理由と習得法をあわせて解説

一口に「エンジニア」といっても、所属する業界や職種、社歴などによって収入は当然異なります。そこで今回は、給与データベースサービス『PROJECT COMP』の登録データを用いて、「高年収を狙いやすいエンジニアのスキル」を探ります。
PROJECT COMPに登録されているスキルは現在14種類。そのうち「その他」と、さまざまなスキルを包括した「フルスタック」のデータを除いた全12種類のスキルの中から、年収中央値が高いトップ3のスキルについて、それぞれの理由や将来性を見ていきましょう。

年収中央値第3位は「ML/AI」
PROJECT COMPに登録されている12スキルのうち、3番目に年収中央値が高いスキルは「ML/AI」で765万円です。
「ML/AI」は、AI(人工知能)領域での研究・開発に関わるスキルを指し、コンピューターにデータを学習させたり、アルゴリズムを構築をしたりするML(機械学習)エンジニア、AI技術を用いてデータ分析・解析を行うデータアナリスト、収集したデータを用いてプロジェクト課題の改善・提案を担うデータサイエンティストなどを含みます。
ML/AIスキルの年収が高い理由
ECサイトのレコメンド機能や、『Siri』や『Alexa』などの音声アシスタント、医療現場における画像診断など、AIは今や生活のあらゆるモノに活用されています。
今後もAI導入はますます進む見込みで、経済産業省が平成30年に出した「IT人材需給に関する調査」では、AI需要が今後も高まれば、AI人材の数と需要のギャップが広まることが指摘されています。そのためML/AIスキルを持つエンジニアは今後も必要とされ、長期的に高年収を狙えると言えそうです。

ML/AIスキルを習得するには?
ML/AIスキルの年収統計グラフを見てみると、下は300万円代~上は1,000万円以上と、年収の幅が広いことが分かります。いくら需要が高いとはいえ、ML/AIスキルで高年収を目指すのであれば、上位数パーセントに入るレベルのスキルを身に付けることが必要です。

一例として、経済産業省の「IT人材需給に関する調査」では、AI人材の各領域におけるエキスパートレベル、ミドルレベルを以下のように定義しています。

では、これからML/AIスキルの習得を目指す場合、まず何から始めればいいのでしょうか。
将来的にエキスパートレベルを目指すのであれば、AIに関する正しい理解を深めることは当然として、「現実に起きている課題に対してどのようにAIを活用していくか」を考えられる力を身に付けていくことが大切です。
そこでおすすめなのが、AIオンライン講座『Coursera(コーセラ)』の活用。特にスタンフォード大学のAI研究者、アンドリュー・ン氏が講師を務める「ディープラーニング専門講座」は、AIの基礎から実践までを最新動向を踏まえながら学ぶことができ、世界で60万人以上が受講する人気講座です。
高校レベルの数学知識や中級のPythonスキルがあれば問題なく理解ができる内容になっているほか、毎週プログラミング課題の提出が義務付けられているため、実践問題を通じて体系的に学習を進められるのが特徴です。
Courseraの他にもAIに関する講座は国内外で多数存在します。経済産業省が公開している「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」では入門編~上級編までさまざまな講座がまとまっているため、興味や自身のレベルに合わせたスキルアップが可能です。
年収中央値第2位は「モバイル(iOS+Android)」
『PROJECT COMP』に登録されている12スキルのうち、年収中央値が2番目に高いスキルは「モバイル(iOS+Android)」で783万円です。
スマートフォン・タブレット上で動作するアプリケーションはiOSとAndroidに分かれますが、どちらのアプリ開発も担える場合、このスキルに該当します。なお、iOS単体の年収中央値は723万円、Androidの年収中央値は623万円となっています。
これらのスキルを用いてスマホ用アプリケーションを開発するエンジニアをネイティブアプリエンジニアと呼びます。
モバイル(iOS+Android)スキルの年収が高い理由
モバイル(iOS+Android)スキルの年収が高い理由の一つには、この10年でスマートフォン保有率が急増したことに伴ってスマホアプリの需要が高まり、開発の担い手が必要とされていることが挙げられます。

実際に総務省の「令和3年版情報通信白書(PDF版)」の「デジタル経済の進展とICT市場の動向」を見ると、2016年から2020年までにモバイルアプリの市場規模が倍以上も拡大していることが分かり、2023年までの予測値も右肩上がりになっています。

このようにモバイル開発のスキル自体の需要が高い中で、iOS・Androidどちらの開発も担えるエンジニアはさらに希少性が高いため、平均年収も高くなっていることが伺えます。
ちなみにAndroidよりもiOSのスキルの年収中央値が高く出ている背景としては、国内のiPhone人気が理由の一つとして予想されます。
統計データサイト「StatCounter」でモバイルOSのシェアを見てみると、グローバルではAndroidが69.71%を占めているのに対し、日本では69.18%をiOSが占めています。
もしどちらか一方のスキル取得を選ぶ場合、国内での活躍を前提とするならiOSを、グローバルまで視野に入れるならばAndroidを、という選び方も一つの手です。

モバイル(iOS+Android)スキルを習得するには?
モバイル(iOS+Android)のスキルを取得する際は、まずはiOSとAndroidのどちらのスキルからマスターするかを選びましょう。それぞれに特徴があるため、自身がやりやすい方から手を付けてみるのがおすすめです。
<Androidの特徴>
Googleが提供するAndroid Studioなどの開発環境を用い、主にJavaやKotlinで開発します。AndroidアプリはiPhoneアプリに比べ端末の種類が多岐にわたることなどから開発難易度が高い傾向にはありますが、一方でiPhoneよりも制約が少なく、比較的自由度があります。
<iOSの特徴>
iPhoneアプリの開発にはAppleが提供するXcodeという統合開発環境を用います。使用言語はObjective-CやSwiftです。iOSはAndroidと異なりハードウェアとソフトウエアの両方をAppleが開発していることから、Androidよりも統一感があるのが特徴です。ただしAndroidほどの自由度はなく、Apple社の規約に沿った開発が求められます。
なお、Flutter や React Native といったクロスプラットフォーム開発フレームワークを用いることで、一度のコーディングでiOS、AndroidのほかWindowsOSなどのさまざまな環境で動くアプリを作ることもできます。
ただしクロスプラットフォーム開発の場合、OSごとの不具合対応や、各OSに依存する機能の実装が難しいといったデメリットもあるため、一流のネイティブアプリエンジニアを目指すのであれば、iOS、Androidそれぞれの開発環境でスキルをマスターすることを目指しましょう。
モバイル(iOS+Android)のスキル取得をこれから目指すのであれば、アプリケーション技術者認定試験やシステムアーキテクト試験などの資格取得を目指して勉強をするという方法も。どちらもアプリ開発に必要な知識を体系的に学ぶことができます。
年収中央値第1位は「セキュリティ」
PROJECT COMPに登録されている12スキルのうち、年収中央値が最も高いスキルは「セキュリティ」で950万円です。
セキュリティに配慮したシステム設計、運用、サイバー攻撃を未然に防ぐための対策を行うスキルを指し、具体的にはサーバーの構築や運用保守、脆弱性診断といった業務を担います。
セキュリティスキルの年収が高い理由
今やどんな業界・サービスであってもセキュリティ対策は欠かせなくなってきています。会社の機密情報や従業員の個人情報、顧客情報の漏洩は会社の信用に大きな打撃を与えます。他にも、例えば自動運転自動車やドローンなどのロボットがサイバー攻撃を受けた場合、人命に関わる事故につながることも。
そうしたサイバー攻撃を防ぐためには、情報セキュリティにまつわる知識のほか、ネットワークやインフラといった幅広いスキルを高度なレベルで要します。さらに、ハッカーによる攻撃は次々と巧妙化・悪質化するため、常に最新の技術と知識をもって対処することが求められます。このような高い需要と専門性が、セキュリティスキルの年収につながっていると考えられます。
セキュリティのスキルに関しては将来的にも重宝されます。参考として、令和2年に総務省のサイバーセキュリティタスクフォース事務局が公開した資料「サイバー攻撃の最近の動向等について」では、2018年から2019年にかけて不正アクセス行為の認知件数、フィッシング届出件数ともに急増していることが分かります。

さらにこの1年ほどで企業のテレワーク導入率が増加し、セキュリティへの関心はピークに。また、デジタル庁の発足により国内でDX(デジタルトランスフォーメーション)への意識が高まっており、今後よりデータのデジタル化が進むことを考えると、セキュリティエンジニアの活躍の場はさらに広がることが予想されます。
セキュリティスキルを習得するには?
セキュリティエンジニアとして高いレベルで活躍するには、サーバーやネットワーク、暗号化や法知識などの幅広い知識・経験が必要です。バックエンド経験のない方は、まずはネットワークエンジニアの入門資格といわれる「シスコ技術者認定」のCCNA(Cisco Certified Network Associate)の資格取得を目指して基礎知識を付けていくのも一つの手です。
サーバーやネットワークの経験が一定ある方の場合は、セキュリティ関連の資格の中でも高難易度の「情報処理安全確保支援士試験」の合格を目指して勉強をするのもおすすめです。合格率19.4%とハードルは高いものの、セキュリティにまつわる知識を体系的に学ぶことができるほか、国家資格のため自身の希少性を高めることにもつながります。
まとめ
ちなみに、PROJECT COMPに登録されているスキルのうち、最も年収中央値が低いスキルは「テスト」ですが、構成データを見てみると、「テスト」をメインスキルに設定しているユーザーの中にも年収1,000万円を超えている人が複数人います。
つまりどんなスキルを選んだとしても、その分野で高い専門性、希少性を出すことができれば、高年収を狙うことはできるのです。
『PROJECT COMP』を使う際は表面的なデータだけではなく、自身の興味のある分野・技術の中でどのように価値を高めていくかを、統計データや構成データを分析しながら戦略立ててみるのがおすすめ。ぜひデータを使い倒して、年収アップ・キャリアアップに役立ててみてください。