ML/AIのスキルの年収は? 需要や将来性を解説

あらゆる業界にAIが導入されている今、ML(機械学習)エンジニアの存在感がますます増しています。ここではML/AI開発に関する年収事情や、世の中の需要の変化、将来性について紹介します。
※この記事で使用するPROJECT COMPの情報は2022月5月18日現在のものです
ML/AIの年収
はじめに、ML/AIのスキルにまつわる年収水準を『PROJECT COMP』のデータを基に解説します。2022年5月18日時点で、ML/AIをメインスキルに設定しているデータの数は85件。そのうち年収平均、中央値は以下の通りです。
平均年収 | 830万円 |
中央値 | 750万円 |

スキルデータのうち、平均年収の最高値はフルスタック(990万円)、次にセキュリティ(900万円)、モバイル(iOS+Android)(900万円)、そしてML/AI(830万円)と続きます(※その他を除く)。ML/AIの年収はPROJECT COMPの登録データの平均年収を3%上回っており、比較的高いことが分かります。
ML/AIの年収統計は以下の通り。なお、ML/AIスキルの構成データのうち、最も低い年収は380万円(社会人歴6年目)、最も高い年収は1,390万円(社会人歴5年目)と登録されています。

ML/AIのスキルを持つユーザーの社会人歴と、平均年収/中央値の関係は以下の通りです。

1年目 | 630万円/602万円 |
2年目 | 690万円/675万円 |
3年目 | 670万円/715万円 |
4年目 | 700万円/680万円 |
5年目 | 1120万円/1100万円 |
6年目 | 810万円/790万円 |
7年目 | 1220万円 |
8年目 | 840万円/880万円 |
11~14年目 | 1100万円/1090万円 |
15年目 | 940万円/850万円 |
基本的には社会人歴を重ねるごとに年収が上がります。企業によるバラつきは大きいものの、「5年目」を超えると1000万円を超えることも珍しくなくなります。職種で最も多いのが「データアナリスト/データサイエンティスト」、次が「ソフトウェアエンジニア」。4年目までは「研究開発エンジニア」も多くなっています。
以下は、ML/AIのスキルを持つエンジニアの平均年収/中央値を企業別に示したものです。

株式会社サイバーエージェント | 780万円/760万円 |
株式会社ディー・エヌ・エー | 880万円/785万円 |
ヤフー株式会社 | 780万円/680万円 |
株式会社ZOZOテクノロジーズ | 870万円 /640万円 |
LINE株式会社 | 900万円/722万円 |
企業によって多少差はありますが、平均年収は700万円後半以上が多くを占めます。
上記の企業の中には、AIを活用したサービスを商品にしているところもあります。一例ですが、LINEのAIチャットbotサービス『エアフレンド』やDeNAの音声変換AI『VOICE AVATAR 七声ニーナ』など、toC向けのサービスは多くの人にもなじみがあるところでしょう。そうした事業はML/AIのスキルを持つエンジニアがいなくては成り立ちませんから、必然的に年収も高くなると考えられます。
ML/AIの仕事
ML /AI は、AI(Artificial Intelligence:人口知能)の一種であるML(Machine Learnig:機械学習)や広くAI領域において研究・開発するスキルです。MLは、データ(経験)からの学習により自動で改善するアルゴリズムやその研究領域を指します。
ML/AIのスキルを用いた仕事
ML/AIのスキルを扱う職種には以下のようなものがあります。
データアナリスト
ビジネスの内容を理解し、適切な分析を行い、課題の特定や解決策の提案を行う職種です。
データサイエンティスト
ML/高い専門性を持ってデータの前処理から分析、予測・分類モデルの作成を一貫して実施する職種です。ソフトウェアエンジニアと連携して、予測・分類モデルをシステムに導入・運用することもあります。
機械学習エンジニア
データサイエンティストなどが作成した機械学習モデルを実際にアプリケーションへ実装する職種です。
ML/AIに関わる言語や技術
ML/AIのスキルを活かして活躍する場合、以下のような言語や技術に対する深い知識が求められます。
Python
AIや機械学習のプログラミングで広く使用されるオブジェクト指向のスクリプト言語です。文法がシンプルで、機械学習に使えるライブラリが豊富なのが特徴。Pythonの意味であるニシキヘビがロゴマークになっています。
R言語
統計解析に特化したプログラム言語です。Pythonでも統計解析はできますが、より詳細な解析が可能です。統計解析のS言語をベースに開発されました。文法がやさしいといわれます。
SQL
データベースを操作するための言語です。データ分析においては、データベースから必要なデータを取り出すときに必要です。
ドメイン知識/ビジネス力
データアナリストやデータサイエンティストには、技術力以外にビジネス課題を解決するための視点が求められます。ドメインスキル(業界知識)や会計・マーケティングの知識のほか、コミュニケーション力やプレゼンテーション力もあるとよいでしょう。
データサイエンティスト協会では、データサイエンティストに必要なスキルセットとして「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」「ビジネス力」を定義しています。同協会が公開している「データサイエンティスト スキルチェックリスト」を見れば、具体的に必要なスキルを一覧でチェックできます。
ML/AIの将来性とキャリア
ML/AIのスキルを軸にキャリア形成を考える場合、スキルの将来性や、キャリアプランの選択肢を理解しておくことが重要です。
ML/AIの将来性
検索エンジンでプログラミング言語のチュートリアルが検索された回数から、人気プログラミング言語の話題性を数値化した「PYPL Index(PopularitY of Programming Language Index)」を見ると、機械学習やAI分野で主流のPythonが1位になっています。
また同じく機械学習によく使われるR言語は、7位にランクインしています。これらはML/AIスキルへの関心やニーズが高まりを反映した結果と考えられます。

また、過去5年間の推移を見ると、Pythonの人気は11%上昇しており、世界中において上昇トレンドが顕著です。

日本では、AI等の先端的なIT業務に従事する人材(先端IT従事者=デジタル人材)は不足しています。経済産業省がみずほ情報総研株式会社に委託した「IT人材の需給に関する調査」では、先端IT人材の不足数は年々増える予測です。
IT需要の伸びや生産性上昇率など前提条件によって数字は変わってきますが、2030年には最大で38万3903人にまで達すると予測されています。今後もしばらくML/AIスキルを持つエンジニアへの求人は増加すると考えてよいでしょう。

先端IT従事者は年収も高めです。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)による「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた 企業とIT人材の実態調査」(2020年)によると、「非先端IT従事者」の年収区分で最も多いのが「500~600万円未満」であったのに対し、「先端IT従事者」の最も多い年収区分は「1000~1500万円未満」で、倍以上の開きがありました。

ML/AIスキルを持つ人材が不足してる日本では、企業もAI人材の育成に積極的です。NECは2019年4月に大学や・社会人向けの人材育成スクール「NECアカデミー for AI」を開講しています。 (参照:「NEC アカデミー for AI」を開講)
データ分析のコンペティション「Kaggle(カグル)」を人材育成に活用している企業もあります。ディー・エヌ・エーでは2018年4月より「Kaggle社内ランク」制度を導入し、一定の条件下で業務時間での「Kaggle」への参加を推進しています。(参照:Kaggle | DeNA×AI)
また日立製作所では、データサイエンティストの応募資格に「Kaggleシルバーメダル(ソロ)以上やデータ分析コンテストでの入賞経験ありが望ましい」を入れています。 (参照:AI/アナリティクス技術により顧客の課題解決を行うデータサイエンティスト 【Lumada Data Science Lab.】)
こうした現状を鑑みても、日本におけるML/AIのスキルを持つエンジニアの将来性は当面明るいと考えられるでしょう。
参考までに、アメリカではML/AIエンジニアが増えており、給与の上昇はいったん落ち着いています。 エンジニア向けの転職情報サイトを運営するダイス(Dice)による「テック系人材報酬額リポート(Tech Salary Report)」の2022年版では、AIスキルを持つ人材の給与は2019年に比べて-2.3%ダウン(12万168米ドル)し、MLスキルを持つ人材の給与は2019年に比べて1.0%アップ(12万2,597米ドル)に留まりました。
しかし、年収の金額では平均の10万4,566米ドルを大きく上回っており、見通しが暗いことを示すものではないでしょう。

ML/AIのキャリアの選択肢
上記を踏まえてML/AIのスキルを活かしながらキャリアアップ・年収アップを目指す方法を、PROJECT COMPの登録データから分析しました。
PROJECT COMPでメインスキルを「ML/AI」と登録しているユーザーのうち、年収1,000万円を超えるユーザー15人の傾向を見てみると、社会人歴は最低で4年以上。
職種は「データサイエンティスト / データアナリスト」が最も多く、「ソフトウェアエンジニア」、「研究開発エンジニア」と続きます。給与は「データサイエンティスト / データアナリスト」が若干ですが高い傾向です。また「ソフトウェアエンジニア」はサーバーサイド開発やWeb フロントエンドなどのサブスキルを持っている人が多めです。

ここまでのデータから、ML/AIのスキルをメインで扱いながらキャリアアップ・年収アップを目指したい人は、「ソフトウェアエンジニア」でサブスキルを身に付ける、もしく「データサイエンティスト/データアナリスト」としてビジネス力も含めた総合的なスキルを磨いていくことが有効だといえそうです。
まとめ
今回はML/AIのスキルについて、年収や仕事内容、将来性を紹介しました。PROJECT COMPでは登録情報が日々更新されていきます。最新データはぜひPROJECT COMPからチェックしてみてください。